いも工房

わたしの趣味をここに綴ります(※当ブログは転載完全フリーです)

35のインレットポート

これから6000エンジン(30エンジン)のヘッドオーバーホールについて紹介する訳ですが、その前に35エンジンについて少し紹介してみます。
趣旨は“30と35のインレットポートの違い”です。


イメージ 1
今の住居に引っ越してくる以前の記念撮影なんですが、35エンジンの燃焼室です。
リヤバンクの右側の気筒です(フロントバンクとは単純比較できないかも知れませんが、これしか画像がないので)。
上がインレットポートです。
バルブシートリングとポートの段差がはっきりあるのが分かりますでしょうか(あまりいい絵じゃないので、分かりにくいですね)。


イメージ 2
こちらは同じくリヤバンクの左側の気筒です。
右側がインレットポート。こちらは分かりやすいと思います。
バルブシートリングとインレットポートの段差が明らかです。

ポートの360度全般的に段差になっていて“バリ”という感じとは違います。ポートの径がシートリングの径より明らかに狭いんですね。

30エンジンの場合はシートリングの内径は私の実測で20.0mmちょうどくらい。
シートリングの一番上の方でも一番下の方でも同じ径で、すなわち円筒状になっています。

ところが、35エンジンの場合は、
シートリングの一番上の方(燃焼室側)は20.0mmで30エンジンと同じなのですが、
シートリングの一番下の方(キャブ側)は19.0mmになっています。
つまり円錐状に絞られているんですね。
この19.0mmっていう数値は、メーカーの公表値と一致しています。
「流速を上げるためにポートを19ミリまで絞った」なんていう風に紹介されています。

なんですけどポートの径は、さらにもう一声狭いんです。
どの方向で評価するかによって多少前後する筈ですが、私の実測では18mmチョイくらいしかなかったように記憶しています。


イメージ 3
ちょっと脱線です。前の画像にも映っていますが、スキッシュエリアの拡大画像です。
私が何となくイタズラで表面をならしてしまってあるんですが、ならす前はもっと露骨に先っぽが飛び出したようになっていました。
私は何も考えずに、“何だこれ?、やだな~”くらいの気持ちでヘラで削ってならしたのですが、今思うとデトネの痕じゃないかと思います。
だとすると4ストにもこんな強烈なデトネがあるということになりますが・・・。

ちなみに、これ以外に私は30、35エンジンでデトネの痕跡を確認したことはありません。
虫食い穴風のヤツはよく見ますが、あれもデトネなのかな~。


さて肝心なのは35エンジンのインレットポートの設計思想です。
現象上は単純に総括すると以下の通りになるんですが。
 30エンジンのインレットポートの内径は20.0ミリ
 35エンジンのインレットポートの内径は実質18ミリチョイ程度
 インレットバルブは30エンジンと35エンジンで同一(部品番号が同じ)

何故そうしたのか。
メーカーは流速を上げるために絞った、と公表してはいますが、そういう公表内容は設計思想の本音通りとは限りません。
でも、単にデチューンで絞ったっていう説も、私としては説得力に欠けます。
インレットポートの形状ってエンジンの能力の基本そのものですから、わざわざそこでスポイルするっていう仮説はいまいちピンときません。
エンジンのポテンシャルは最大にしておいて、電気とキャブとサイレンサーで絞ればいいように思えるんですが・・・、どうかな。

とはいうものの、同じような400レプリカの他メーカー同世代マシンでは、
“53馬力規制時に圧縮比を下げた”、
“53馬力規制時にカムの最大リフトを短くした”
なんてのもあったような気がしますね。それは根本的なポテンシャルダウンのようにも思えます。

35のエンジンって、30エンジンに比べると下はトルクが細めのように思えるんですが、上の方は30エンジンより綺麗に廻るんですよね。

エキゾーストバルブは30エンジンと35エンジンとで部品番号が違っているので、そのあたりも35のヘッドのそそる点です。

結論はありませんが、私の考えを述べてみました。

別の機会にカムについても論じてみたいと思います。